開館30周年記念 荒井寿一コレクション 川瀬巴水展
@平塚市美術館
平塚市美術館に行くのは、2014年の『横山大観の富士』展以来でした。
平日の昼間という時間帯でもあったからか、ほとんど人がおらず、ゆっくり楽しむことができました。
好きな作品は目録に印を付けながら観ていたのですが、私好みのものばかりで、途中から「印をつける意味ある?」と思ったほどでした。
中でも、初期から中期の作品、季節は夏から秋にかけての作品が好みだったように思います。
特に、空と海の青の濃淡、木々の緑の深さに惹かれました。
夜を描いた作品では、建物とその後ろに佇む木の影とは、黒の質感が全く違っていて驚きました。
また、作品によっては作家の言葉がキャプションに載っていたのが嬉しかったです。
展示では撮影可の作品もあり、撮ることができました。
色味が変わると、印象も随分変わるんだなぁと思った作品。
以下、私のお気に入りの作品です。
・旅みやげ第一集 秋の越路
空と海の青が美しく、白い波はずっと眺めていたくなるほど。
人間の生活とあたたかさを感じる。
・旅みやげ第一集 しほ原雄飛の滝
水飛沫の部分がとても美しい。
水の流れを感じる。
青の濃淡が素晴らしい。
静けさが好き。
・旅みやげ第三集 大坂高津
地面の光と影で月明かりを感じるところが好き。
光の美しさと、夕日に染まる富士が好き。
・日本風景集 東日本篇 八之戸深久保
水面が岩に当たっているところの揺れが好き。
・日光街道
緑と影のコントラストが好き。
小さく描かれてた人物によって、木々の迫力が増している。
大正末から昭和初期にかけて絵を担当した『演芸写真帖』の表紙も興味深く、観るのが楽しかった。
・演芸写真帖 第6巻第7号 表紙
市村羽左衛門の与右衛門
同時に開催されていたこちらも観てきました。
柳原義達展
これまで彫刻を観る機会があまりなかったので、新鮮な気持ちで観ることができました。
中でも印象的だったのは、大量の鴉と鳩の彫刻、そしてNo5「犬の唄」でした。
「犬の唄」とは、普仏戦争に敗れたフランス人のレジスタンス精神を表明したシャンソン曲名のこと。
No5「犬の唄」は、作家自身が「私なりのレジスタンス」として制作したものだそうです。
背中を丸めて立っている女性のブロンズ像でした。
解説ボードの中に、印象的な言葉が載っていました。
「私が生と死の運命にたたされているように、仕事の中に生を求めてめぐり廻り、私が生きている不思議さを仕事のなかに刻みたい。大自然のなかにいる鳥が、雨や、風や、嵐や、喜び、かなしみ、の運命にいるように」
「私はいったい何が出来るのか、良しにつけ悪しきにつけ、私は私の仕事の一つ一つの記号を記さなければならない。自分なりに歩んだ道に記号をかいて、私は歩むしかない」
数多くの作品を観て、心が満たされたような感じがしました。
美術館に行って自分の目の前で作品を観ることは、スマホ画面や紙で見ている時とは全然違う感動を与えてくれます。
運営が厳しい世の中になってしまいましたが、どうかこの素晴らしい文化を続けていけますようにと、心から願っています。
美術館前の道の薔薇が、綺麗に咲いていました。